深夜…ある山脈の奥深く、自然に包まれた山中に明らかに異質な建造物が建っていた。
パイプで表面を覆われたそれはまるで何かの工場だった。
それを見おろす位置に立つ二人の女性。
いずれも流れるような長髪に赤いアンテナが二本、頭部から生えている。

方や全身を多い隠す裾の長いコートを羽織った女。
方や動きやすそうなタンクトップにジーパンを履いた女
「ここが、あの子のいるプラントね…」
「ニュースから半年もかかっちまったな…
生きてたとしても多分、もう…」
タンクトップの女が言いかけたのをコートの女が制止する。
「生きていたら、それで良いの。
私たちだってそうでしょう?」
コートの女が優しく微笑むと、銀色のポニーテールがサラリと揺れた。
「じゃあ、行こっか。」
二人は森の中に消えた。
(…揺れてる…。)
建物の奥底で少女は不意に襲う不快感に目を覚ました。
少女は不定型な椅子に座らされ、体の至る孔にチューブを挿れられれる
定期的に点滴を刺し、また定期的に身体能力をを測定される。
その間彼女は遠くの振動を感知できるようになっていた。
それを半年間繰り返されていた彼女は今日も考えるのを辞めた。
建物の廊下に視点は変わり、血塗れの男が壁に叩き付けられる。
男が睨んだ先にはコートの女。
「ぐふぅっ!!…貴様、何者だ…」
「聞いているのは私の方。
半年前、貴方たちが誘拐した子は何処にいる?」
男は口を噤み離そうとしない。
コートの女は落ちている無線を拾い上げスイッチを入れた。
『司令室、司令室!!!こちら第四防衛ライン!!!
現在所属不明の戦力と交戦中!!!
至急増援を、繰り返す至急増援を!!!』
答えようとする男の口を手で塞ぎ、コートの女が答えた。
男と全く同じ声で。
「『実験体の処分を優先する。増援は、その後だ。』」
『そんな、地下37階だぞ!?
片道だけでどれだけかかると思っているんだ!!!
時間がない、間違いなくあれはNo.4…』ブツッ
不快な音を立てて通信が途絶えた。
おそらく、連絡を入れていた無線が壊れたのだろう。
男は無線から聞こえた『No.4』という単語を思い出して顔を青くした。
「No.4は死んだはず…まさか…まさか貴様等…!!!」
「…ここで灰になるのと、組織本部に逃げ帰って実験体に降格するのと、どちらを選ぶ?」
男は完全に答えることができなくなった…。
無線から、タンクトップの女の声が聞こえる。
『あ~もしもし、こっちの連中は灰を選んだみたいだぜ。』
重い金属の扉を開ける音がする。
暗い部屋で明かりを灯したのは二人の女。
そして不定型な椅子とつながった少女を見て
コートの女は顔をしかめ、タンクトップの女は口元を押さえた。
「これは、何の為にこんな事…」
「ひでぇ事をしやがる、生かして吊るすべきだった…!」
タンクトップの女が舌打ちして壁に拳を叩きつける。
コートの女は少女につながったチューブを一つ一つ抜き取る。
そして目隠しを取ると、そこには青とオレンジの、光を反射しない瞳が二つあった。
「遅すぎた…っ!!!」
コートの女は悔やむように俯いた。
壁を破壊し、何者かが暗い部屋へと侵入する。
それはグロテスクな肉塊をあちこちに貼り付けたようなロボットだった。
「さしずめ本部から支給されて来た安物の防衛システムって所か。」
タンクトップの女が左腕に力をこめる。
左手の皮膚が分解し、内部から出てきたパーツと入れ替わる。
それは銀色の手甲のような物だった。
「変っ身!」
タンクトップの女が掛け声を上げると、四肢の皮膚が分解。
内部から出てきたパーツと入れ替わる。
赤いアンテナに耳のようなパーツが被さり銀のヘルメットと漆黒のバイザーが頭を覆う。
同時にタンクトップの上を銀の甲冑が覆う。
その姿は、正に狼を擬人化したようにも見えた。
No.4たる姿を明かしたタンクトップの女が体格差のあるロボットを一撃で蹴り飛ばす。
それによってロボットが塞いでいた部屋の出口への道が開いた。
「今だ、壱織姉!!その子を連れて早くエレベーターに!!」
壱織(いおり)と呼ばれたコートの女は頷いて少女を抱え出口へ向かう。
ロボットがそれを静止しようと立ち上がるが、その眼前にNo.4が立ちはだかる。
握った拳に電流が走る。
「邪魔を…すんなぁ!!!」
まるで巨大な鉄塊に鉄穿弾を打ち込んだような轟音を立てて
拳をロボットの腹部に刺し込む。
そしてロボットの内部で拳を開き、掌を高速振動させてその巨体を弾き飛ばす。
「早く!!」
上昇中の簡易エレベーターの上から壱織が手を差し出した。
No. 4は跳躍し、手を掴む。
「よいしょお!!!!」
壱織が力いっぱいにNo.4を引き寄せる。
コートの袖と黒い手袋の隙間から緑色の装甲が見えた。
3人が山頂に辿り着いたその時、建物は大爆発を起こした。
「はぁ、はぁ、はぁ…助かったぁ。」
息を切らしているNo.4.
「後は、この子をどうするかだね。」
少女を担ぎながらも少しも息を切らさない壱織。
山中の道路に出たところで車のライトが3人を照らす。
眩しさに光を映さない目を顰める少女。
「おぅい、もういいのか~?」
車の中から渋い年輩の男の声が聞こえる。
壱織とNo.4は微笑み、応えた。
「「ただいま。」」
Act1…Fin
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