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架琉魔研究所

うたかたの如く消えては浮かぶ気紛れ野郎、架琉魔の小説・挿絵保管庫です。

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act4 微小機械

それはまさに、地獄と形容すべき風景だった
平和な筈の住宅街の家屋はその殆どが原形を残しておらず戦いの凄惨さを物語り
崩れた家屋からは死臭が、燃え上がった家屋からは人の焼ける臭いが漂ってくる
壱織と紅葉は背中合わせで二つの敵と戦っていた
一つは、黒い軍服を着た集団…ファウストの強化兵達
もう一つは、クリーム色の体液を節々から垂れ流す蟲のような怪物達…そして…
「…っ、流石に数が多すぎるよ壱織姉。」
「お願い、目を覚まして!!」
壱織が蟲達の先に居る…物言わず涙を流し、蟲を装甲のように纏った少女に叫ぶ
「気をしっかり持って、梨沙ぁ!!」

話は、その日の朝へと遡る
「着替え終わったかー?」
大家さんが玄関の外で待っていると、壱織が中から親指を立てた手を見せOKの合図をする
中へ入ると、そこにはクリーム色の可愛い少女がいた、着替えを終わらせた梨沙である
淡い色のセーターとロングスカートは以前助けた時の悲惨な格好を忘れさせる
寧ろクリーム色という独特な髪の色が人形じみた可愛さを引き立てているのは皮肉とも言えるだろうが…
「おぉ、より可愛くなったじゃないか」
大家さんが言うと無表情な梨沙の顔が少しだけ綻んだ、この子も野菜スープの一件以来大家さんには心を許しているようだ
壱織達は梨沙を取り返した際に彼女の親族の居場所を調べていた
ロストした被害者を最も幸せな形で助ける、それが壱織の目的であり紅葉にとっても過去の償いとなっていた
もっとも、ここまで救出に成功した例は今まで紅葉と梨沙の二人のみなのだが
そして一番難しい課題が、改造を受けた梨沙を家庭に受け入れてもらえるかだ
鏡を支える紅葉が少し項垂れた、その頭をのしのし家に上がってきた大家さんが殴る
「ぎゃんっ!!?わっ、何するんだよ」
一瞬の痛みに頭を押さえて、慌てて倒れそうになった鏡を支えなおし紅葉は大家さんに訴えかける
「いつまでも気にしないって言ったのは紅葉だろうが、それよりは梨沙の事を心配してるんだな」
その言葉に納得し…殴るのはやりすぎだとも思うが納得した紅葉は「そだな」と一言言って梨沙を見た
「ところで、その親戚ってどんな奴なんだ?」
紅葉が聞いた
「五花・佳奈果(かなか)っていう女の人、工業大学の教授…」
「なんだ、壱織と元同業者か」
大家さんの何気ない一言に紅葉は目を見開いた
「へ、壱織姉って教授だったの?…じゃあ今何歳…」
「昔の話よ。」
途中ではっきりとした壱織のその言葉に遮られ、紅葉は言葉を詰まらせた
「…あと歳は関係ないでしょこの身体だったら、もう」
わざとらしく頬を膨らませた壱織だが、過去の話題には本当に触れられたくないらしいと言う事は紅葉にも理解できた
同時に、同じ身体を持つ義理の姉に対しての壁さえも…
「もみじ…おねぇちゃん」
紅葉が気がついてすぐ横下を見ると、梨沙が紅葉を心配そうに見上げていた
相変わらずの無表情だが、心配しているという事は不思議と感じられた
「……ごめんな、あたしがこんなじゃ不安になるよな。」
紅葉は一回、両手で頬を叩いて気付けをした
今度こそ鏡が倒れて割れて、大家さんが紅葉の頭を殴った



「バカになったらどうしてくれるんだよ、こんなあたしでもここは唯一生身なんだぞ?」
「バカだな、もう既に馬鹿じゃねぇか。それ以上はないから安心しろ。
せっかく貸してやった鏡を粉々にしやがって。」
頬を膨らまして車の後部座席に座る紅葉に大家さんは冷徹な返答を返した
それによって不満の表情を余計露わにする
「・・・。」
梨沙が二人の間の険悪な空気に首を項垂れている
壱織がなだめるように言う
「まぁまぁ、そろそろ着くよ。」
壱織達の載った車は都内にある住宅地に佇む、ある一軒家の正面に停車する
「ありがとうございます大家さん、それじゃあ話を付けてくるから
あっちも工学の専門だから、話はわかるだろうしね。」
そういって大家さんに一礼した後、壱織は車を降りてチャイムのボタンに手を伸ばそうとした
伸ばそうとして…辞めた
車の窓を割って、紅葉が車から飛び出したからだ
「…な、紅葉!!人の車になにを…」
「壱織姉!!血の匂いだ!!」
紅葉のその一言で、大家さん…大樹と壱織の目つきが変わった
壱織は大きく腕を引き、力づくで家の門を叩き壊した
紅葉はそのまま塀を跳び超えて敷地へと入り込む
紅葉の目が庭の窓から見える内での人影を捉え、判別する
黒い軍服、ファウストに所属する人間が6人
そして肩から血を流している妙齢の女性、恐らくは五花佳奈果
紅葉の思考はファウストの殲滅に向けられた
右手の皮膚が銀色の装甲と入れ替わる
「変身!!」
掛け声と共に紅葉の全身が銀色の甲冑に変換した
「変身…!!」
壱織もコートを脱ぎつつ駆け足による衝突で家屋のドアを突き破る
ドアが弾けた向こうには、緑色の甲冑に身を包んだ壱織が居た
ファウストの軍服達がその存在に気付いた時にはもう遅く、紅葉は窓ガラスを突き抜けて
軍服の一人の頭部を鷲塚んでいた
そして勢いに任せ回転し、佳奈果らしき女性に近い軍服に投げつける
しかし対象の軍服は左手を振り上げ投げられた軍服を弾き飛ばした
熱量で軍服の腕が焼け落ちる、その腕は機械で作られていた
「強化兵か、厄介だ。」
軍服達は掌から刃を突き出し、女性を確保しつつ紅葉に襲い掛かった
しかし紅葉もそれ以上の装備を持っている、指先から爪が伸びると紅葉は軍服の刃を引き裂いた
引き裂かれた刃には高熱を帯び熔かされた跡
放熱の爪を仕舞い、紅葉は電磁加速ブロウで軍服の腹部を貫いた
…頬が、釣り上がった気がした
自分達より高性能の紅葉に気を取られている隙に、女性を確保している軍服の後頭部に衝撃が走った
壱織が軍服の脊椎コードを切断したからである
「大丈夫ですか?早くこっちへ!」
「あ…あんたは…!!」
力の抜けた軍服の腕から佳奈果を離し壱織は家の外へ駆けだす
車の周囲にも、軍服の集団が集まりだしていた
「…ちっ、ここは住宅街だぞわかってんのか!?」
中の人間がどうなっているのかが解らないため、壱織達が来るまで車は発進はできない
かといってこのままでは道が軍服で埋め尽くされてしまう
「大家さん!!」
「ちょ、ちょっと待っておくれよ…っ!!」
壱織が女性の手を引き玄関から跳びだした
「遅い!!早くしろ壱織!!」
車の後部座席を開けて二人を入れる準備をする
しかし、一発の銃声の後、女性は崩れ落ちた
力が抜け去ったのではない、文字通り硝子のように崩れ落ちたのだ
大樹も壱織も、突然起きた常識を無視した現象に自らの目を疑った
門を越え、転がってきた女性の首を見て理沙は
無表情なその顔を、恐怖で歪ませた
「…ま………ま…………?」
それを聞き逃さなかった大樹は、理沙の方へ振り返り聞き返した
「……なに?」
梨沙の様子は明らかに異常だった
「いや…いやぁっ…ママが、や…あっ…」
全身が震え、顔は蒼白となり、こんな状況なのに何かに耐えているような
しかしそれは限界へと達し絶叫と共に産み出した
「ぁぁ…ぁぁああああっ…っ!!!!」
梨沙のスカートの隙間から銀色の液体が流れ出す
その場に屈み込んだ理沙は吐き気を催す自身の変化に口元を押さえこむ
「おい、理沙!!」
そう言って車から飛び出し理沙の席へ駆け寄ると、窓越しに何かと目が合った
それは巨大な複眼、銀色の液体がうねり、固まり、変色し、クリーム色の蟲のような機械を形作っている
「うぐっ…ぅぅっ…~~~!!」
苦しむ梨沙の足を伝い、元は人の子を生むべきそこからも機械は溢れ出し理沙の体を埋め尽くそうとしていた
「梨沙!!くそ、そこから出ろ!!」
蟲の群れとなった車内から理沙を助け出そうとドアを開ける
しかし車内から飛び出した蟲の群れが大樹を押し出した
「うわあぁっ!?…ウソだろ?」
それは羽虫だった、細かい羽虫が車から溢れ出し、一瞬の内に辺り一帯の空間を覆い尽くした
しかし羽虫は車と家屋から一定の距離を置いている
堪らなかったのは軍服達だ、正体不明の羽虫が機械の隙間から入り込んでくるのである
壮絶な羽音に何事かと窓を開けた一般人にも羽虫達は襲い掛かり、悲鳴と絶叫が街中から響く

バチ……

そしてどこかで火花が走り、羽虫達は街全体を巻き込んで…大爆発を引き起こした

ゴバアアアアアアァァァァァ…!!!!!!

「梨沙あぁぁぁぁ!!!」
大樹の呼び声は、爆風にかき消された


それは、何処から来たのか…
とある研究施設に辿り着いた、瀕死の男の応急治療から始まった
『これはどういう事だ?人間が持ちえる生命活動器官を何で代用しているんだ…』
現代の科学技術を凌駕した技術によって改造を施されたその身体は
その殆どが機械仕掛けだった
それは、その手術に立ち会った女学者の目に見ても複雑かつ簡易的な機構
『ありえない、こんな簡単な機構で生命維持なんてできる筈がない
でも現にこの男は生きている…』
まるで魔法だ、優れ過ぎた技術は魔法としか認識することができないと何処かの心理学者が言っていたが
これは紛れもないオーバーテクノロジーだった
『こ…こいつ、俺達にも造れるんじゃないか…?』
ある一人の研究員が、手術中に呟いた

ノイズ、一呼吸置いて、瞼が開いていく
「…っく」
瓦礫を押し退けて地表に這いあがった壱織は、まさに地獄と形容すべ光景を目にした
平和な筈の住宅街の家屋はその殆どが原形を残しておらず戦いの凄惨さを物語り
崩れた家屋からは死臭が、燃え上がった家屋からは人の焼ける臭いが漂ってくる
「一体、何が起こったの?」
ひび割れたバイザーが自己修復を始める、サイボーグ化の際自身の血に混ぜられた
微小機械が生物と機械の中立を保っているその副作用だ…それで、思い出した
「そうか、どうりで梨沙ちゃんが生身に近かった訳ね。」
爆発前に理沙が見せたあの異変、あれは機能を拡張した微小機械が蟲として集合体を形作ったものだ
本物の虫を含む生物の殆どが細胞の集合体として形作られるのと同じように
恐らくは梨沙自身も身体は微小機械の塊なのだ
そうこう壱織が思案しているうちに、紅葉が瓦礫から這い上がってきた
「…ぶはっ!!壱織姉ぇ、一体何が起こったんだ…っ!!?」
鼻を突く死臭に思わず鼻を押さえる、直感的に脳に植えつけられた本能を刺激しない為に
「これは、一体何が起きたっていうんだよ…」
「紅葉、あれを見て。」
壱織に促され、紅葉が見た先には
四肢を粉々に破壊された軍服の頭部を握り上げる、クリーム色の『怪人』が居た
「多分これは、罠だったのよ。
梨沙の親戚なんて初めから居なかった、母親の偽物を殺して梨沙のトラウマを刺激させ
暴走させた本来の機能と破壊力を試す、実験。」
ヘルメットの下で壱織がぎりりと歯軋りをする
上空から、ヘリコプターの羽音が聞こえる
垂れ下がってきたワイヤーを伝い、黒い軍服を着た集団が降りてくる
今度は全員が女性、爆発前に戦った集団より格上と悟れる
いや、壱織が睨むのはその先、クリーム色の怪人と壱織達の中間に佇む少女だ
18歳前後に見えるスタイルの整った身体を作務衣に包み、背後に身の丈の半分はある紫色の多脚の機械を従え
銀色の長髪をツインテールにした少女、その頭部には壱織達と同じ赤い二本のアンテナ
「No.1…いえ、桜博士。
この一帯は完全に社会から末梢…ロストされました。
No.5をこのまま引き渡すのであれば、 元同僚 の好でこの場は見逃します。
只でさえ、今はあの子を取り押さえるだけで強化兵も多く廃棄する事になりそうですし。」
混乱する紅葉を背に、壱織が睨みかえして女性に言い返す
「ふざけるのはその病的な女装趣味だけにしてほしいんだけど?三井教授。」
それは明らかな挑発だった、頬をひくつかせ、少女…三井教授は言い放つ
「特殊改造機No.3の権限において、No.1及びNo.4の破壊を許可します!!」
「くぅぁぁぁぁああああああああああああ!!!」
その怒号と共に、クリーム色の怪人が涙をまき散らし雄叫びをあげた
瓦礫の隙間を伝い、クリーム色の液体が滲みだし巨大な蟲が姿を現した
それも一体ではなく、軍服で包囲された隙間を埋め尽くすように大量に
「…駄目っ!!」
壱織が叫んだ時にはもう遅く、蟲達は強靭な顎で近くの軍服を砕き、喰らい始めた
三井教授もこれは予想外の状況らしく、舌打ちして多脚機械の上に跳び乗った
「な…なぁ!!どういう事だよ!?
あの怪物は何!?それに壱織姉ぇが…」
紅葉が言おうとした事を遮り、壱織は言った
「あれは、梨沙ちゃんの生んだ兵器よ。
それであの怪人が…梨沙。」
紅葉は悲痛な表情で怪人…理沙を見た
嘗てのクリーム色の美少女の面影はなく、複眼から絶えず涙を流し暴れる梨沙に
紅葉は嘗ての自分の姿を重ねた
「うそ…嘘だよね…梨沙ぁ!!」
現実を否定するように嘆く紅葉をよそに、三井教授は狂喜を高笑いに乗せて笑った
「これだ!!!我々が今まで達し得なかった肉体の限界を超えた進化!!!
これで我々は、『あの男』にまた一歩近づいた!!!」
その時、轟音と共に弾丸が三井教授の頭部めがけて放たれた
しかし三井は微動だにせず、足元の多脚機械が器用に広い壁の瓦礫を蹴りあげ着弾を防ぐ
弾丸が炸裂した壁は一瞬の間をおいて爆発した
弾道の先には巨漢と呼べる体格でさえ不釣り合いな銃を持ち脱臼した肩を抑え
額から血を流しつつも生き延びた大樹の姿があった、彼も生身ではあるが一般人ではない
苦痛に顔を顰めながらも、肩をどうにか押し治しもう片腕で銃を紅葉に襲い掛かる軍服に向け放つ
「が…あっ!!」
反動でまた鍛えた肩が外れそうになり、更なる苦痛に声なき悲鳴を上げそうになるが押し殺す
右胸に着弾した弾丸は爆発し、軍服は微塵に消し飛んだ
「否定するな!!戻してやれ、泣いてるだろうが理沙は!!」
その一声が鶴の一声になり、我を取り戻した紅葉は三井教授の認識速度を上回るスピードで理沙に駆けだした
壱織も背中に内蔵した剣を抜き、三井教授と軍服達に構える
「貴様、まさかあの時の!!」
睨む三井に大樹は好戦的な笑みを見せて言った
「よぅじじぃ、怒鳴り声に迫力が無くなったなおい?」
「…!!No.5の確保を最優先しろ!!!」
三井教授の指令を受け軍服達が梨沙の方を向くが、その隙をついて
大樹は弾丸を一つ取り出し、安全ピンを抜いて軍服に投げた
弾丸にした時より高威力の爆発が軍服を襲う
それを認識した軍服は大樹にも襲い掛かるが振り下ろされる鉄槌を銃身で受け流し、後方の軍服の心臓部にそれをぶつけ破壊させる
そして近接した軍服の口に通常のピストルを押し込み何発も放つ
ビクビクリと痙攣した後、軍服は動かなくなった
それを蹴り飛ばした大樹が軍服達から距離を置くのを手伝うように壱織が軍服の集団に剣を振る
鋭利な切断面で、大樹に殺到した軍服の数体が切り裂かれた
「思いどうりに行くと思うなクソ爺ィ、せめてお前だけでも此処で潰す!!」
引かず、親指を下に向け挑発する大樹
「梨沙も渡さない!!」
剣を三井教授に向け、ファウスト達の注意をこちらに向ける壱織
そして、怪物蟲の頭を踏み越え理沙に向い跳躍する紅葉
「気をしっかり持って、梨沙ぁ!!」
三つ巴の戦闘が始まった
              To be continued
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プロフィール

HN:
架琉魔
年齢:
36
性別:
男性
誕生日:
1989/09/26
職業:
大学生
趣味:
TRPG
自己紹介:
サイボーグ、もしくはメカ少女が好きすぎて生きるのがつらい。
しかし何とか生き延びて、メイドロボでも完成させようと只今デザイン工学に進んでいます。
絵はプロに比べればまだ全然だめですが;
21禁?なにそれおいしい?

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